笑点のある風景

先日、出先でどうも調子が悪いなぁと思っていたら
地面がグラグラゆれてやばい感じになってきた。
変な汗が出るし、顔色も真っ白だ。貧血か?
とにかく静かなところにそっと座って休みたい
という状態だった。
その時私は渋谷LOFT近くにいて、ごみごみした空気が苦しかった。
そういえばLOFTのおもちゃ売り場にベンチがあったなぁ、
と思って、必死の思いでエレベーターに乗る。
早く座らなきゃ、渋谷で行き倒れる気がした。
エレベーターをおりると、あぁ…。
男女2人がいちゃいちゃしながら、4人がけのベンチに
思いきり幸せな幅をとって座っておる。
「すまんが若い衆、ちょっくら横にずれてくれんかの」
という目で訴えかけてはみたけれど、
幸せな二人には、微弱なテレパシーなど通じるはずもない。
普段ならあきらめるけど、今日はともかくやばいのだ。
強行手段に出ることにした。
数cmの隙間を見つけて脇からそーっとお尻をすべらせる。
カップルは怪訝そうに思う様子もなく、
ちょっとずつちょっとずつ横へずれていった。
幸せな人には自分たち以外、何も見えていないらしい。
こうして私は、ゆっくり時間をかけて、
自分のお尻1個分のスペースを確保した。
もっていた傘に顎をのせ、目を閉じ、安堵のため息。
ササキトモコ、只今の精神年齢83才…。
しかしこう見えて、私は、超健康体なのである。
(不動の病弱キングTさんに敬意を表して)
ウェーブマスターで2番目に病弱である!
…かのように思わせておいて、実は一番健康。
先日の健康診断では、何もかもが標準値におさまった!
(体脂肪率だけ微妙な位置にいたが…)
尿酸蛋白潜血なし、血圧正常、コレステロール正常。
身体の中だけは、血液サラサラ美人ですわ。
肝臓も腎臓も宝石のごとし。
日々、常にどこか調子悪い人ほど実は健康体であるってこと。
身をもって体現しているのが私。
そんなことはおいといて、
調子悪い時は、本当に悪いものだから、
もう自力で家に帰れる気がしなかった。
今晩はこのLOFTのベンチに泊まるかぁ、などと考えたりした。
寝袋ぐらいLOFTなら売ってるだろうし。
どうせなら、隣のカップルも一緒に泊まってくれないかな。
一人よりいい。
「ねぇぇん、あたし弟欲しかったんだ」
「俺は兄弟いらない。うざいよ。ひとりで良かった。」
「ほら、あたしって兄弟いねーじゃん?
あ!いいこと考えた!
ねーねーねー!なる?あたしの弟に?」
「おう、いいよ。っつうか俺が兄貴ね。」
「あ、でもさでもさ、そしたら結婚とかできなくない?」
LOFTのおもちゃ売り場には、なぜか笑点の曲が流れ続けている。
〜♪ぱっぱぱぱらりや。っっぱっぱっ パフッ!
地獄の無限ループだ。
気が狂うぞこれは。
笑点の曲をBGMに聞くカップルの会話はシュールだった。
そして、それを脇で聞いている83才の私の尊厳までもが、
ブレイクの「パフッ!」で雪崩のように崩れてゆく。
「パフッ!」が巡ってくる度に何度も何度も私は壊れた。
1時間ほど同じ姿勢で座っていただろうか。
カップルはいつのまにかいなくなり、
ベンチには、笑点の曲で狂いかけた私ひとり。
家に帰ってすぐにシーケンサーを立ち上げたら
間奏の「チョビヒゲを感じさせるギターソロ」まで
完璧に打ち込める自信がついていた。
その自信は、体力とは関係ない自信だったけど、
私は立ちあがり、近くのタクシー乗り場までいくことができた。
笑点万歳だ。
で。今、世間では笑点が流行してるの?
〜まめ知識〜
笑点とは、ある研究家によると、こう定義されている。
「それは圓楽を頂点とし、山田隆夫を最下層とする
厳格なヒエラルキーの世界。
大喜利はこれまさに人生の縮図。」
