ロビタ入院する

家族にひとり、陸ガメがいるのだが、
これが毎日毎日、それは良く食べるし、良く騒ぐし、
糞尿は大量にするし、一番いきいきとしているのである。
人間が疲れきっていても、おかいまいなしに騒ぐし、
人間が風邪で寝ていようが、遠慮なくえさの要求はするし、
挙句の果てに生殖器をだして遊んでいるし、
本当に元気なのである。
彼の名をロビタという。
男だとわかったのはつい最近だ。
女扱いして悪かったな。
さぞかし納得いってなかっただろうな。
最近なんだか便秘気味だなぁと思っていたら、
あっという間に10日も続いてしまって
ひまさえあれば、目が飛びでそうな顔をしていきんでいる。
重症の便秘らしい。
お風呂に長時間いれてやったり
水っぽいものを食べさせてみたりするのだが、
一向に糞も尿もでない。
そのうち、食欲もなくなって動きがにぶくなってきた。
ついに病院へつれてゆくことになった。
調べたら、カメ専門医は少し遠い場所にあった。
電車でいかなければならない。
幸い、衣装ケースにはぎりぎりはいる大きさだ。
まずは、衣装ケースに水分吸収シートをしきつめる。
びっくりして尿漏れすることがあるかもしれないからだ。
そして、バスタオルで何重にもくるんで、
オナカをホッカイロであったかくした。
陸ガメはオナカを冷やしてはいけないからだ。
電車はちょうど帰りの通勤ラッシュで混みあっていたが、
彼は暴れまくっていて、全然じっとしていない。
皆が邪魔そうに見ているこのでかい袋の中に
まさか陸ガメがいようとは誰も思わないだろうな。
よく見るともぞもぞと動いているんだけどね。
病院につくと、問診表を書くように言われた。
人間の病院と全く一緒だ。
「ロビタ」という診察カードまで作ってもらった。
そして「ロビタ君、どうぞ」と呼ばれて、診察室へ。
ママゴトでもしている感じだった。
「でかいですねぇ。」
体重は測ってもらったら5キロもあった。
ビックリした。
症状をはなすと
「結石の疑いがあります。レントゲンとります。」
ええええ?結石?
またビックリした。
いや、んなわけない。
だって糞がでないだけだもん。
きっと、レントゲンとっても、
糞がたくさんうつるだけに決まってる。
しかし、あがってきたレントゲン写真には
これまたビックリだった。
野球ボール大の塊がどかーんとあった。
誰が見ても巨大結石だった。
陸ガメの総排出孔からは、糞も尿も尿酸(白い尿)も何もかもが出てくる。
そこに結石ができてしまったので、
何もかもが出なくなってしまったのだという。
「緊急入院と手術が必要です。」
突然ふってわいた話だった。
またまたビックリした。
ビックリし過ぎてもう言葉も出なかった。
うちから手術の必要な重病人を出すだなんて。
「便秘にはコーラック」のカメ用でも注入してもらって、
さっさと家に帰ろうと思っていたのに、
今日は一緒に帰ることもできないと知り、ショックをうけた。
「これから点滴をうって、手術はあさっての夜。
総排出孔から結石を掻き出してみます。
ただ、いやーな位置に結石がはまっちゃってますから
掻き出しではうまくいかないもしれませんね。
その場合、全身麻酔で開腹手術という方法もあります。
ただ、こちらだとカメへの負担もあるし、
金銭的にも飼い主さんの負担がかかりますので、
そうなったらまたご相談しましょう。」
そんなこんなで、からっぽの衣装ケースを抱えて電車に乗った。
軽い。行きに比べてあまりにも軽い。
普段は、餌をあげなければいけないので、
長期間の旅行にはいけないのだが、
不謹慎だけど、今なら旅行のチャンス!とふと思う。
でも、心配だし、手術代はかかるし、師走だし、忙しいし、
もーなんすかねぇ。
このやりきれなさは。
でも病気になったことで、
今までにくらしかったロビタがかわいく見えてきた。
本当に勝手だよな、人間は。
わかってる。
わかってるんだけど、夜中に「ゴフッ」とか「ブヒャッ」とかいう
カメの寝言に起こされることなく眠れたことは
久しぶりでちょっとうれしかったんだ。
悪い。
本当にごめんな。
