サーカス


先日、訳あってサーカスのシーンのある映画を大量に借りた。
どれも以前見たことのあるものばかりだけど、
何度もみても良い。
特に、フェリーニのサーカスものは良い。
サーカスといっても、アメリカのじゃなくて、
ヨーロッパのもののほうがいい。
アメリカのサーカス映画は健全で豪華だ。
でも、ヨーロッパのサーカスはなんだか悲しいし、
後ろめたい。
9才か10才の頃、街はずれに何かが立ちはじめた。
ピアノ教室の近くだったので、レッスン帰りに
何ができるのか興味津々で観察していた。
そのうちでっかい小屋が建った。
しばらくして看板も立った。
お化けとか、蛇女とか、恐い絵がいっぱい書いてあった。
私は、街にお化け屋敷専門店ができた!と思い、感動した。
友達とふたりでお小遣いを握りしめてお化け屋敷にいった。
お化け屋敷は少し怖かったけど、あっという間に終わった。
友達は「もう終わり?」といって怒っていた。
その日はそれで帰った。
数日後、ピアノレッスンの帰りに小屋の前を通ると
ちょうど蛇女のショータイムだった。
怖かったけど、一人ではいった。
ショーといっても、ガラスに囲まれたスペースが舞台となっていて、
動物園の動物を見ているような感じだ。
蛇女が出てくるというので、私は恐怖におののいていたが、
出てきたのは、むっちりして派手な化粧をした色白のおばさんで、
大蛇を首にまきつけてみたりしていた。
なーんだ、蛇女って「蛇を持っている女」ってことか、
とひどく落胆したが、大蛇を見たのは初めてだったので感動した。
他にも、筋肉隆々の男が上半身裸でやる力自慢ショーがあった。
また、スタッフとして、大人なのに小さい男の人がうろうろしていた。
その時の不思議さは、私の心に深く刻まれている。
もしかして、夢だったのかもしれないと思うこともある。
2〜3週間ぐらいたって、小屋は跡形もなくなった。
蛇女の話をしたら、友達が自分も行きたいと言い出したので
今度一緒にいこうねと約束していたのに。
あの小屋はこの街にちょっと寄っただけなのだ。
あの不思議な小屋は二度とこなかった。
もう一度みたい。
ヨーロッパの映画に出てくるサーカスは、
あの時の小屋を思い出させる。
日本のどこかで、あの時のような小屋が
巡業していないか、探しまくったことがあるが、
日本の見せ物小屋の人々は、年老いて引退しているらしい。
残念だ。
毎年、麻布十番祭に公園に建つお化け屋敷。
短くてすぐ終わるし子供向けなのに、ついついはいってしまう。
いつも同じおばさんが呼び込みをして、同じおじさんが券を売っている。
毎年、受付の女のコ(小学生)がどんどん育ってゆく。
今年は、混んでいたので中にははいらなかったけど、
受付の女のコの成長だけ確認してきた。
なんかちょっと美人になってるかも。