暗やミール報告書ー前編


私んちの自慢の夜景


1年程前、ウェブで「暗闇レストラン」の記事を見つけました。
「失恋レストラン」みたいだなぁ、とクリックしたのですが、
文字通り、暗闇の中で食事を提供するレストランのことでした。
場所はパリ。大人気で、予約がとれないとのこと。
日本にないのかと探してみたら‥ありました!
「暗やミール」という名で。
先月、そのイベントにやっと参加することができました。
これが、私にとっては大興奮の経験となったのです。



実は私の仕事机


その日が近づくにつれ、私は不安にかられていました。
若かりし頃、電車に乗ったり、レジに並んだり、
誰かと食事をしたり…、といった、軽い日常の束縛に、
いちいち具合が悪くなった時期があったんです。
今でも調子が悪いと、その感触はすぐに戻ってきます。
そんな軟弱者が、暗闇という束縛に耐えられるんだっけ?
同行してくれたのは、Klapスタッフの坂下さん。
ネットラジオ「月いちトモコサン」を、
いつも支えてくれている女性です。
坂下さんが側にいてくれれば安心だ、
と思っていたのですが‥。
暗やミールは、浅草の緑泉寺で行われました。
待合室では既に10名の客が待っていました。
なんでも、今日会ったばかりの見ず知らずの我々は、
受付で配られたトランプの順に席が決まっているというのです。
つまり、まっ暗闇で、知らない人と向き合うことになるのです。
終わった。と思いました。
坂下さんが側にいなきゃ、もうレポなんて無理。
暗闇の束縛で、途中、気分が悪くなる自分が目に見えるようでした。



不安な私をよそに、お客達は2階の会場へ、
一人ずつ吸い込まれてゆきます。
私と坂下さんは最後のほうだったので、
待合室に残った人達と話す機会があったのですが、
「月刊仏事」の方と、某放送局のディレクターの方、
ということがわかりました。
我々を含め、なぜか取材関係ばかり。
(のちに、TBSのカメラマンもいたことが判明)
そしていよいよ!
坂下さんと別れ、一人っきりで会場へ。
主催の方が、暗視カメラをつけていて、席へと導いてくれます。
会場には12名もいるはずなのに、
シーンとしているので、怖くて今にも倒れそうでした。
暗闇というのは、少したてば目が慣れて、
なんとなく見えるようになるものですが、
そんな甘っちょろい暗闇ではないのです。
パーフェクトな暗闇なのです。

日本のブラックホール。
暗闇といえば彼の洞窟だ。
探検したい。


食事の前に、ありがたいことに自己紹介の時間があって、
向かいの人の手を握る機会もありました。
相手は、驚いたことに、さっき少し会話を交わした
某放送局のディレクター、コジマさんでした。
ここで、私は、かなりほっとしたんです。
顔を思い浮かべることができるからです。
矢継ぎ早に会話をして、襲ってくる不安を忘れることにしました。
幸い、コジマさんは無口ではなかったので、とても助けられました。
中盤で、少し暗闇酔いをしました。
体をまっすぐに保つための基準になるものが見えないので、
グルグルとめまいがしてきたのです。
ちょっとやばいかな、と思ったのですが、
次から次へと運ばれてくる料理への好奇心と、
暗闇から聞こえてくるコジマさんの声のおかげで、
なんとか持ちこたえていました。
後半に続く