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2005年01月12日

箱屋

仕事で使う用にと言い訳に、
前からほしかった箱の本を買った。
箱は、いい。
箱屋になりたい。
何千種類の箱たちを、ほこりのかぶった棚に陳列し、
片隅のレジでひっそり客を待つ私は、腰のまがった年老いた男だ。

暗い店内には小さな窓がひとつあいていて、
そこから、隣接するギムナジウムの寮が見える。
この地方は雪深く、石炭だけが唯一の町の産物だ。
私は、少年たちの白いすねが、
寒さで赤くなって右往左往しているのを日がな見ている。

少年のだれかがこの店をおとずれることはない。
私はこのあたりでは、きちがいだと思われているからだ。
無論、親しい友もいない。
箱屋にくる客は、みな一様にあたりをはばかりながら店に入ってくる。
そして、だれにも見られていないことを確かめると
ほっとしたようにドアを閉め、コートについた雪をはらい、
今度は一心に箱を探し始める…自分だけの箱を。


投稿者 wakaba : 2005年01月12日 14:16

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